目次
本ページの趣旨 ↑
本ページは、QualNetやシミュレータ一般に関する知識をまとめたものです。
内容については、なるべく正確を期すようにしてはいますが、あくまでご参考までにご覧下さい。
QualNetに触れる際、一番初めの手がかりになれば幸いです。
はじめに ↑
まず始めに、QualNetで採用されている離散シミュレーションとは何か、また無線通信のシミュレーションとはどんなものか、について概要を説明します。
離散シミュレーションとは? ↑
文章で表現すると、以下のようなものです。
- ある事柄(イベント)がある時間(t0)に発生
- その結果を受けて、別の事象あるいは同じ事象が、ある時間後(t1=t0+Δt0)に発生
- 更にその結果を受けて、別の事象あるいは同じ事象がある時間後(t2=t1+Δt1)に発生
- いろんな事柄、イベントが時間差を持って延々と続く:「因果応報の世界」をコンピータで計算するのがシミュレーション
これを絵で表現すると・・・
(下のスライドはスライド内をクリックすることで進みます)
無線通信ネットワークのシミュレーション ↑
無線通信をシミュレートする場合、無線=電波を用いるため、その特性をモデル化する必要が生じます。
無線のシミュレーションでは、電波が届く・届かないという現象が重要となります。
この「電波が届かない」原因には、主に以下の二つが考えられます。
- 電波は伝搬距離や遮蔽物によって減衰する → 伝搬ロス(パスロス、シャドウィング)
- 他の(時には自身の)電波と出会う事で、波形が崩れる or 打ち消される → 干渉、マルチパスフェージング
このような、物理現象をモデル化する必要性がある、という点に、有線ネットワークとの決定的な違いがあります。
電波干渉のような複雑な物理現象を、ある程度簡略化、モデル化してシミュレーションする際のアプローチとして、一般的に、確率・統計モデルを用いる、というものがあります。
例えば、ビットエラーをBit Error Rate Table(BERテーブル)から確率的に判定する、フェージングによる電力変動を統計的に算出する、などです。
QualNetでも上記のようなモデル化を行っており、その事によって高速な無線ネットワークシミュレーションを実現している、とも言えます。
シミュレーションの流れ ↑
QualNetを利用した、実際のシミュレーションの流れを、パケットの送受信処理に着目して解説します。
パケットの流れ ↑
SourceノードのApplication層で作成されてからDestinationノードのApplication層で受け取るまでの、パケットの基本的な流れは、以下の図のようになっています。
Application Layer | CBR(Constant Bit Rate Application) |
Transport Layer | UDP |
IP Layer | IPv4 |
Mac Layer | 802.11(MAC_DOT11) |
Physical Layer | 802.11a/b |
Propagation Layer | default |
なお、プロトコルが異なれば別の関数が使用されます。
アーキテクチャ概要 ↑
ここでは、QualNetのシミュレータとしての構造(アーキテクチャ)に焦点を当てて解説します。
メッセージ処理:パケットとタイマー ↑
QualNetではパケットとタイマーをメッセージ(イベント)として同じように管理しております。下記の図はパケットとタイマーをスケジュールしている例です。
メッセージに関してはコチラをご覧ください。
データ構造 ↑
ここでは、QualNetで重要な構造体であるノード構造体とメッセージ構造体について説明します。
イベントディスパッチ処理 ↑
各イベント(イベントメッセージ)は、設定されたタイマー時刻になると、そのイベントの起こるノードの関数NODE_ProcessEvent()関数で呼ばれ、 その後、メッセージ構造体内の複数のメンバ変数に設定された内容を参照しながら、原則として以下の順で分岐、処理を進めます。
1.レイヤによる分岐 ( msg->layerType ) ex.)network.cpp : NETWORK_ProcessEvent() さらに必要であれば、instanceId(protocolTypeだけではどのオブジェクトのイベントか判断出来ない場合)による分岐も起こります。 3.イベント種別による分岐( msg->eventType) ex.)aodv.cpp : AodvHandleProtocolEvent() ex.)phy.cpp : MSG_PHY_TransmissionEnd
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